隊長 齊藤栄一郎
隊長 齊藤栄一郎

TAKAHIRO
HORIKAWA

農業は、「人」だと思う

生産者特殊部隊 U.T.O. 隊員 堀川嵩紘

堀川嵩紘さんは、日本名水百選にも選ばれた「轟水源」がある宇土市轟地区で、ナスを生産しています。「U.T.O.」では、皆のアイデアを活かして実際に動く役割だと話す堀川さん。活力的にさまざまなプロジェクトを動かしていく堀川さんに、U.T.O.に込めた思いを聞きました。

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当時は珍しかった法人化を進めた父の存在

農家の3代目として育った堀川さん。祖父の代ではメロンやいんげん、キュウリなどを育てていましたが、父の代に施設園芸をメインに「ファームホリカワ」として法人化しました。「今では農業の法人化は珍しくないものの、当時はほとんどありませんでした。熊本県でも10社目くらいだったと聞いています」。会社から出荷する体制を整えたうえでいち早く「契約栽培」の形を取り入れ、B to Bの取引を始めたのもファームホリカワの特長でした。

「やはり当時は異質な存在だったんでしょうね。周りの農家から“なんでそんなことすっとや”といった目で見られていて、父は反骨精神を持っていたのだと思います。苦労するなかで経営を安定させようと努力していた記憶があります」

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農業でも効率化を追求する姿勢を

ただ、堀川さん自身は「農業の魅力の、『み』も感じられなかった」と話します。「幼い頃、祖父と父が農業のことでケンカしたり、“きついきつい”と繰り返したりするのを見て、農業を継ぐことはないかな、と」。高校卒業後は農業とはまったく異なる、工業系の会社に就職。自動車の製造ラインを担当しました。「今思えば、工場の仕事は好きでしたね。効率優先で無駄な動きがなくて。自分に合っていたと思います」

しかし、次第に「家族も大事にしないと」「自分の代で途切れさせるのもな…」という気持ちになり、20歳の頃、積極的でないながらも就農することに。「農業を始めるにあたって、“農業はなんて非効率なんだ”と驚きました。工場とは違って無駄な動きは多いし、動線はまったく考えられていない」。堀川さんは就農後の一つの目標に「効率化」を掲げ、試行錯誤を始めました。「ただ、それは本当に少しずつの挑戦です。一つ解決して次へ、また一つ解決して次へ…。この挑戦は農業をやっている間はずっと続くと思いますね」

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人生の大きな分岐点。苦しい時期を乗り越えて

一方で、ファームホリカワに転換期が訪れました。取引先とのトラブルからそれまで栽培していたトマトをやめ、すべて「ナス」に転向することに。

堀川さんはその時30歳。「あのときは、自分の人生でも大きな分岐点でした。ナスへの転向に加え、結婚式も控えていてその準備もありました。さらに地域の消防団の大会で入賞をしたことから2~3ヵ月間、県大会に備えた連日連夜の練習が重なったんです」。朝から夕方まで慣れないナス栽培、夜は大会の練習、空いた時間で結婚式の打ち合わせ…と目が回るような日が続きました。「すごい毎日でした。ストレスからか円形脱毛症で10カ所くらい頭にハゲができて…結婚式はどう隠そうかって」。堀川さんは思い出すように笑顔を見せます。

奥さんに小言を並べられながらも支えてもらい、なんとか無事結婚式と消防団大会を終わらせた堀川さん。次第にナス栽培のおもしろみ、楽しさを感じるようになってきたといいます。

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付加価値を求めて始めたU.T.O.の活動

ただ、生食に向かないナスは、甘みやうまみをそのままで感じにくく差別化が難しい野菜です。「ファームホリカワのナスにどう付加価値をつけるか」が堀川さんの次の課題になりました。

そこでチャレンジしたのが、U.T.O.の仲間となる小森大将さんから誘われた販売会。「初めてB to Bではなく、B to C、個人に対する関わりが生まれました。利益が出たわけではなったけれど、ナスづくりに前向きになる大きな経験となりました」

販売会のつながりから誕生したU.T.O.への参加も決めた堀川さん。「7人で、次何しようか、と考えるのが楽しかったですね」。三つ星レストランに、自分たちの野菜を送る『三つ星プロジェクト』、マルシェ、商談会など、新たなチャレンジを続ける中で、堀川さんも自身の経験である「契約販売のノウハウ」「法人化」について仲間と情報の共有もしていきました。

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7人の知識の積み重ねが、自身の会社の強みにも

異なる経験、知識を持った7人が集まっているU.T.O.。堀川さんも自身の知識を共有するなかで「U.T.O.の強みは、7人の知識の積み重ね」と感じたのだそう。「7人が全員、異なる役割、異なる好奇心を持っています。“これがおもしろい””これをやったら楽しいよね”が集まって、それを共有することで一歩一歩確実に進み、それが売上につながる、すごい団体」と自負を見せます。「本当に7人がそろってよかった。みんなの経験があるからこそ、U.T.O.はもちろん自身の農業への方向性が見えてくるんです」。

U.T.O.を介して、新たな事業やプロジェクトを試せるのもU.T.O.の隊員のメリットといいます。「1社だけでは失敗して厳しくなるようなことも、7人がいるから、反省があり、サポートがある。課題を解決して、会社として成長するきっかけになる。7人がそれぞれにアンテナを張っているから、農業に関する情報が、日本で一番集まる場所じゃないかな」と堀川さん。

「U.T.O.での10年の活動を通して、本当に農業は人だな、と痛感しましたね。他の団体から『続く理由』を聞かれることもあるんですが、『みんな本当に人がいい』が答えなんじゃないかな」。仲間とのつながりを糧に、U.T.O.も、ファームホリカワも成長していきたいという強い意志が感じられました。

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生産物
茄子(10月〜6月)

※天候により出荷時期が若干前後する可能性があります